子宮脱
子宮脱は骨盤臓器脱の一つで、子宮が下垂し腟口から脱出してしまっている状態を指します。ほかに膀胱瘤や直腸脱なども同じ疾患範疇にあります。
子宮脱には完全に脱出する前(子宮下垂)から分類がありますが、治療において最も重要なのはご本人の自覚症状です。子宮下垂の時点で強烈な違和感がある人もいれば、多少子宮が見えていても自覚症状に乏しい方もいらっしゃいます。
病因
子宮はおなかのなかで各種靭帯によって支えられている臓器です。靭帯は骨とは違い伸びることができるため、妊娠、出産という子宮のダイナミックな変化に適応できます。子宮脱の状態とはこの支持組織が弱まってしまい(その原因は多様です:加齢、手術、出産など)、子宮が支えられなくなってしまっている状態です。この変化に拍車をかけるような行為がリスクとして言われています。例えば過度に息むこと、重い荷物を持つような腹圧を上げる行為、長時間の立ち仕事、などですね。ちなみに分娩は分娩でも帝王切開術の場合はリスクが下がると言われています。
症状
子宮脱の症状としては、子宮下垂感(異物感)、下垂による痛み、排尿障害、出血、便秘、性交障害など多様です。この中でも、排尿障害、特に尿が全くでないような症状がある場合は、緊急的な処置が必要となる可能性があります。個人差が非常に大きいです。治療が必要かどうかも症状によるところが大きいため、同じような所見のかたでも治療が異なるということはよくあります。
治療
治療は保存的治療と手術療法があります。
保存的治療には予防法も含まれます。以下に紹介していきます。
・骨盤底筋群体操:いわゆる膣トレ、骨盤トレ、肛門トレとも言われる運動です。どれも似ていますが、骨子は肛門や膣を締めるような運動を10秒ほど持続し解放させる、ことを10回程度繰り返します。他人にばれる様な位一生懸命にやらないことがコツです(そこまでやると逆に腹圧がかかる場合があります)。隣の人にばれたらだめですよ。
・ダイエット、禁煙、生活習慣の見直し:リスク回避です。
・リングペッサリー:子宮内に白いリングドーナツのような器具を入れて、子宮が落ちてこないようにします。もっともメジャーな治療だと思いますが、違和感が強い方は合わないかもしれません。また、程度によってはすぐに落ちてしまうなどデメリットが目立つこともあります。メリットとしては、うまくいけば費用が安いこと、手術を回避できることであり、デメリットとしては、感染に注意しなければいけないこと、長期留置でのトラブル、3か月から6か月に1回は受診が必要であること、などになります。
・フェミクッション:実際に子宮が落ちてくる部分に、専用の柔らかいクッションをおいて外側から支えることで落ちてこないようにするものです。メリットとしては子宮内に物が入らないこと、清潔を保てることなどです。保険適応がないため、ご自身で購入いただく必要があります。
・手術:手術療法のメリットは根治術となる可能性があることです。手術の内容は病状やご本人の意向によって異なります。大きなデメリットとしては、再発のリスクがあることです。子宮脱のため子宮全摘出術を行った場合、子宮脱が再発することはありませんが、同様の病因で発生する、膀胱瘤や直腸脱、腟脱などの疾患が新たに出てくるリスクがあります。
まとめ
子宮脱を含めた骨盤臓器脱は症状に個人差が大きいものです。
他人を比べてどうか、より、あなた自身の症状が大事です。全女性の75%が骨盤臓器脱の因子を持っているともいわれていますので、お気軽にご相談いただければ幸いです。